白葉 1
春。桜、進学就職、そして新たな出会いの季節。
白葉は今年で高1になった。
学校は家の近くの都立高校に進学。私立に進学した姉の影響で私立に進学したい気持ちがあったが、親に学費の関係で反対され、最終的に今の高校に進学することになった。
中学校3年生までは「しりつ」という言葉にオシャレさを中学生なりに感じ、一時は駄々をこねまくった白葉だったが、最終的に都立に進学した事に後悔はない。
「都立」とは言いながらもバイトは許されているし、制服もそれなりにオシャレで高校の雰囲気も自分に合っていると感じられているからだ。住めば都、と言った所だろうか。
そんな彼女が始めたバイトはカフェの店員バイトである。オシャレに憧れる彼女らしいといえば彼女らしいバイトなのだが、個人経営のカフェなので、シフトに自由が利かないのが玉に瑕だと感じている。
今日も本当は20時上がりで出していたが、店長に泣く泣く頼まれ、21時30分まで働かされた彼女はヘトヘトになって帰り道を歩いていた。
明るく、接客も丁寧な彼女ではあったが、まだ高校1年生。店長に「お願い!」と頼まれたら、「この後用事があるので。」とか「契約違反ですよ。」と強く言える程社会に揉まれた事がなかったのだ。それ以上に彼女は優しかった。心が美しかった。
Instagramを開いてストーリーをタップする。みんなオシャレな店とか遊園地の画像とかを上げている中、自分はバイト三昧。カフェバイトとは言いながらも時給は最低賃金スレスレで働いているので、お金は貯まらないのに、時間だけは奪われていく。しかしそれが「幸せ」かどうかを考えられる程、彼女は人生経験を積んでいなかった。
「みんな、色んなとこ行ってて良いなぁ、私もプリとかディズニーとか行きたいなぁ」
街灯が照らす商店街を家に向かって歩くのだった。