さとう あかり

このブログは如何なる団体にも所属しない個人の発言です。

さとる 1

1/12、日本にしては珍しく雪が降った。

 

夜の商店街に明かりが灯る。

 

蛍光灯の白色は雪の透明感のある白とは違って、熱を帯びている。

 

「違うんだよなぁ」

 

肩に積もっては溶ける冷たい雪を払いながら

智は雲の広がる空を見た。

 

同年1/10、智の推していたアイドルが離婚した。

理由は浮気。離婚した次の日にその浮気した男と籍を入れた。

 

智はこのアイドルが舞台で演じる純粋無垢なところを推していたので、結婚してた事も許せなかったし、浮気したという事は尚更許せなかった。

 

そんな智には好きな子が居る。

大学に入ってから女子の女の字もない彼の恋愛遍歴では勿論手に入れるまでの道のりが遠すぎるが、それでも彼は気になっていた。

一目惚れ、だった。

智の推しているアイドルに似ている、ただそれだけのこと。

 

一目惚れなんて顔目的の恋愛だろという非難が出てくるのは当然の話だが、年齢=彼女がいない歴である彼にとって、恋愛は所詮、可愛い子と仲良くしたい。というそれくらいの物でしかない。

 

知り合った経緯は飲食店バイト。

ふとした会話がきっかけだった。

智が落としたジョッキを彼女が拾ってくれた時、お礼を言った後の

「いえいえ、とんでもないです。」

が彼に響いたのだ。

 

馴れ初めを思い出しながら、彼は商店街を歩いて家に向かう。

冷たい風は吹いていたが、雪は上がりそうだ。